アメリカのファッションブランド、アメリカンイーグルが日本撤退を表明。現在ファッション業界では、ファストファッションを中心として、アジア市場からの撤退が相次いでいます。
今回は、巨大ファッションブランドの3つの撤退事例と、3つの主要原因をざっくり解説します。
相次ぐ撤退: 巨大ファストファッション アジア衰退の歴史
フォーエバー21の撤退 (日本: 2010, 2009~2019年)
フォーエバー21 (Forever 21) は、韓国出身のアメリカ人 ドン・チャン氏とその妻が経営する アメリカ・ロサンゼルスを拠点とするファストファッションブランド。2010年に一度日本市場に参入し、1年で失敗し、撤退しました。
2009年4月、原宿に再上陸、最大、国内14店舗を展開。しかし、2019年10月にオンラインストアを含む、全店舗を閉店。最終日は50円など、信じられない価格で在庫を処分しました。
本国アメリカでは、 2019年9月 連邦倒産法11章 (チャプター11)を申請、倒産処理手続きに入っています。
オールドネイビーの撤退 (日本: 2012〜2017年)
オールドネイビー (Old Navy) は、アメリカ・サンフランシスコ拠点のカジュアルブランド。ギャップ (GAP) 系列のいちブランドです。
2012年7月、お台場のダイバーシティ東京プラザに日本1号店を出店し、店舗は 最大53店舗まで拡大。しかし、たった5年足らずで、日本から完全撤退しました。(2017年1月)
2020年には、中国市場からの撤退を予定しています。
今後は、本国での売り上げ加速に集中するようです。2018年は、微増ながら 3%の売上増を記録。現在は、親ブランドのギャップから分社化を宣言しています。
アメリカンイーグルの撤退 (日本: 2012~2019年)
アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ (American Eagle Outfitters) は、アメリカ・ピッツバーグを拠点とするカジュアルブランド。
日本では、2010年、青山商事と住友物産と合弁でフランチャイズ経営会社を設立。2012年4月、表参道に日本第一号の旗艦店をオープンしました。2019年までに33店舗まで拡大しましたが、2019年11月下旬、2019年内にオンラインストアを含む全店舗を完全閉店することを発表しました。日本市場からの完全撤退です。
出典: カジュアル事業, セグメント別売上高・営業利益 | 青山商事 HP (2019年11月)
青山商事は、ジーンズのリーバイスとともにカジュアルファッションのフランチャイズ事業を手がけています。しかし、2015年以降売上も下落傾向、営業利益は一貫して赤字が続いていました。
アジア撤退 3つのトレンドと原因
他社との差別化が要因
ファッション小売業界は、内的要因、外的要因が強く作用する熾烈な業界。その中で、勝因を決めるのは他社との差別化です。
今回は、下記3社とカンタン比較してみます。
- ザラ(スペイン)
- ユニクロ(日本)
- H&M (スウェーデン)
1. 徹底した流通戦略
ザラ (ZARA) は、スペインのインディテックス社が展開するファストファッションブランド。インディテックス社は、徹底したクイック・レスポンス・サプライ・チェーンは、徹底したインハウス流通を実現しています。地元の職人の力を借りて、社内のデザイナーが洋服のデザインをしてから、スペイン国内で集中量産。工場から、最短48時間で日本の店頭に新しい洋服が並べられます。
そのおかげで、顧客は、来店するたびに新しい洋服を目にするのです。また、各デザインの個数が限られているため、顧客は次に来た時その服がないことを知っています。そのため購入の後回しが起きにくく、即時購買力を促進しています。
2. ブランドの差別化
ユニクロ (Uniqlo) のいいところは?と聞いたら、みなさんはきっと、ヒートテックなど機能をあげるのではないでしょうか。エイチアンドエム (H&M) は、日本にはない明るい色のデザインや豊富なサイズかと思います。
一方、フォーエバー21は、自社のファッションの特性を 日本市場にあまりアピールできませんでした。韓国系だったのか、アメリカ系だったのかすら よくわかりません。
オールドネイビーやアメリカンイーグルは、アメリカっぽい店舗演出で、まるで海外にいるような空間適用はできました。しかし、特別なファッションモデルの起用もなく、他社のジーンズやTシャツとどう違うのか、差別化を明示することはできませんでした。価格面(マーケティング用語でプライシング)の面でも安いのたか高いのか中途半端で、安価ブランドなのか、高単価ラグジュアリーブランドなのか、差別化できていません。
3. 販売促進キャンペーン
ユニクロの販売促進は日本でとても積極的です。SNSなどでほぼ毎日販売促進を行い、新作やキャンペーンの告知を行っています。また、時流に乗ったキャンペーンも展開し、最近では、キャッシュレス決済の波に乗って、Pay Pay と一緒にキャンペーンを行い、来店促進を行いました。
H&Mは、環境保全と来店促進を同時に叶えるため、古着を持っていくと 500円割引クーポンを配布しています。CSR活動も、他者との差別化を図る大きな訴求ポイントになります。
まとめ:次危ないのは、アバクロ
筆者は、次は、アバークロンビー アンド フィッチ(Abercronbie & Fitch, 以下 アバクロ)が危ないと思っています。
現在、アバクロは、グローバル運営の最適化を図り、店舗の大リストラ中。各国の旗艦店ですら、バンバン閉店しています。
具体的には、ヨーロッパファッションの中心地、イタリア・ミラノ、デンマーク・コペンハーゲン、アジア経済中心地の香港。2020年には、福岡の旗艦店も閉店予定だそうです。
また、こちらアバクロの決算の状況をご覧ください。注目は売上 (Revenue) と利益 (Gross Income) です。
出典: Annual Financials for Abercrombie & Fitch Co. | MarketWatch (2019/11/26 現在)
過去5年間の売上は、2015年が頭打ちで、ほぼ下落傾向です。利益もほぼ横ばいとなってしまっています。
日本市場は、参入障壁が高く、洋服でも食べ物でもなかなか海外ブランドが入ってきません。せっかく日本で買えるようになった洋服や食べ物が、日本で食べられなくなるのは残念です。
日本がアジアナンバーワンになるには、法人税引き下げなど、外資参入をしやすくし、国内競争を活性化することが重要かと思います。
以上、めちゃくちゃざっくりですが、ファッション業界のカンタントレンド解説でした!
画像提供: Retail in Asia
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